G-cluster(ジークラスタ)基本セット
コレを選ぶメリットがイマイチ見えない
評価:★★☆☆☆
ファンの方々の反感を買うことを覚悟で言います。
スタートダッシュに失敗して、今後浮上するのに苦労しそうな製品。といった印象です・・・
※購入から2ヶ月ほど経過しましたが、もう・・浮いてこない・・・気がする・・・
クラウド専用ゲーム機としての存在価値は高いと感じます。万難を排してこれを製品として実現したことも高く評価します。
停滞気味のゲーム業界に新風を吹き込む存在であるかもしれません。
しかし消費者視点から見れば、クラウドかローカルかにかかわらず、対価に見合ったものが得られるかどうかが第一ではないでしょうか。
現状のコレと同じような(あるいはより多くの)ゲームができるゲーム機を何台か持っています。
ソレらに対してコレが優位に立てる点が(少なくとも今現在)見いだせません。残念ながら。
では何故買ったのか?
ダメな子ほど可愛いじゃないですか('∀`*)・・・いや、単に新しもの好きなだけです。
遅かれ速かれ旬が去るのがゲーム機の常。一番早く買った奴が一番長く楽しめるのです。
さて。まずこの本体価格。謳われているほどお安いですか?
詳細仕様が公開されていませんが、台湾メーカー製の汎用機を転用し ARMまたはMIPS系CPUに軽量Linuxあたりを載せてクライアントシステムとゲーム用コンソールを展開しているものと察します。
HDMI出力、電源用microUSB端子、ホスト用USB端子というワンボード構成が汎用格安Linux・Androidマシンを彷彿とさせます。
開発~発売までの時期を考えて2コアCPUのメモリ1GB・ストレージ(が在るとして)4GBくらいでしょうか?
何が言いたいかというと、
「もっとお安く出来たのではないですか?」ということですね。
確か去年のゲームショーでは、価格は「数千円レベル」の予定(関係者)という報道がされていたはずです。
液晶も光学ドライブもハードディスクも搭載しないワンボードの簡易な製品ですから、原価も自ずと察しが付きますし、安価な製品価格が期待出来ました。
あるいは、この圧倒的ローコストこそが本製品の一番の武器だったのではないでしょうか?
蓋を開けてみたらコントローラセットで13,800円(!)
「気軽に楽しむ」をコンセプトに掲げる製品が、気軽に手を出せない価格になってしまったなぁ。と感じます。
コントローラはロジクール(ロジテック)製品の流用です。
ロジクール ワイヤレスゲームパッド F710)
何せ汎用品だしUSB受信機もついてるので、パソコンでも使えます。
逆に一般的なパソコン用コントローラが(有線無線問わず)本製品でも使えるはず(未検証)
お安く上げたい方は本体だけ買って、安いコントローラ(またはお手持ちの)を繋ぐのも良いかもしれませんね(自己責任で)
・・・というか、もっとお安いコントローラをバンドルして製品価格を下げて欲しかった。
基本的にWi-Fi環境で使うものですが、無線接続環境をお持ちでないかたのために「有線接続キット」が販売されています。
G-cluster(ジークラスタ)有線接続キット
中身はというと、アイオーデータ製の汎用USB-LANアダプタ(白!)にエレコム製汎用3ポートUSBハブ(黒!)とmicroUSBケーブル(電源用)のセットで3,500円・・・
もう出所を隠す気無くてもいいから、せめて色は合わせて適正価格にして欲しいというか・・・
そして衝撃の事実。「初回接続時にはWi-Fiで接続する必要があります」(?!)
有線キットを買っても、最初は絶対にWi-Fiが必要ってことなの?? 逆ならまだわかりますが・・・
現在配信されているゲームタイトルは・・・微妙。微妙というか・・・ダメでしょ、これでは・・・
何故か「PCエンジン」のレトロゲーばっかりが目立ちます。「エイリアンクラッシュ」が入ってる辺り、ファンとしては非常に嬉しかったりはしますが・・・
他にもいくつかありますけど、MSNあたりでダウンロードプレイできるようなライト洋ゲーばっかり(名前すら存じません・・・)
「アサシンクリード」「レゴハリーポッターシリーズ」などのスマホ向け大作??もありますが、洋ゲーは現時点で日本語対応していない模様。
(※英語版であるということすら表記されていません。ご注意ください)
参入企業にスクウェア・エニックスの名前も上がっていましたが、参入予定のタイトルも配信開始日も分かりません。何しろ当のスクエニからは発表がないし。
そもそもG-cluster公式サイトでオフィシャルに発表されたわけでもなく、プレスリリースや雑誌・Web記事などで関係者から語られてるだけなんですよね。
発売の際の期待値を上げるために名前を利用したという疑念が晴れません。
いずれにしても、現時点で目玉となるようなタイトルの発表は無いといって良いのでは?
現時点で発表すら無いということは、この先当分ない。もしくは永久に無いかもしれないということですよね・・・
「新時代クラウドゲーム機」とは過去の資産で遊ぶこと?・・・それじゃマズイですよ。
クラウドでなければいけない理由や必然性・ダウンロード&プレイに対する優位性を説明できていない、とでも言いましょうか。
「コレがクラウドの良い所なんですよ」という押しが、あまりにも弱いですよね。
画質はイマイチ。描画性能そのものというより、元来低解像度のゲームをHDテレビ(720p)に出力するせいなのか「絵荒れ」が生じます。
また、ネットワーク回線が不安定になると画質を落として「処理落ち」を防ぐため、これも「荒れ」の一因になっているようです。
小型テレビなら良いのですが、フルハイビジョンの大型テレビでは厳しいと感じました。
(注:この製品は「フルHD対応」ではなく「HD対応」です。画質で勝負する機械ではないので、そこはまぁいいか、と)
操作は多少遅延を感じましたが遊べないレベルではないです。
ネットワーク遅延は良好な状態でも170ミリ秒程度だそうです。つまり少なくとも1/6秒くらいですか。秒間60フレームの映像なら、10フレーム以上反応が遅れるわけです。
※G-cluster本体の描画処理時間や接続ユーザの増加も計算に入れれば、さらに遅延しているのでしょう。
シビアな操作のゲームには厳しいかもしれませんね。ゲームのラインナップにレトロゲー・ライトゲーが多いのはそういった事情もあるのでしょうか。
ビデオ・オンデマンドサービスも利用できるそうで、旧作映画が100円程度からレンタル出来るようです。
何故唐突にビデオ??と思ったら、ブロードメディアさん自社運営のサービスだそうです。
「ゲームでコケても映画観られますよ」という意味ではないでしょうが、そんな日が来そうで怖いです・・・
コントローラとのセットで 13,800円(本体のみだと 9,980円)
有線接続キット3,500円(参考価格?)
1年間有効なゲーム利用権が1本315円から2940円。
他に約30タイトル月額525円プランも用意されてます・・・が、個人的に遊びたいタイトルは30種の中に在りませんでした。
基本的にゲームは「1年レンタル」です。1年経ったらどうなるのかは明記されていません。
なんらかの延長措置があるのかもしれませんが、1年後もコレで遊んでるかどうかは甚だ疑問です(^_^;)
レンタルなので、当然ながら売却することも、知人に貸したり譲渡したりすることもできません。
(SCEさんもMSさんも次世代機でこの辺の対策を立てています。今からでも何とかなりませんか・・・?)
あの・・・間違ってたらゴメンナサイ。
売る気。無い・・・よね??
いや、なんかこう「企画して予算組んじゃったからやるしかない的」な消化試合の雰囲気というか・・・
「売れる!」と思って売ってるようにはとても思えないんですよ。
「発売しない勇気」こそが必要だったのではないでしょうか。
どの層に売り込みたいのかも、将来の展望も全く見えないし。製品発表イベントに参加された方のブログなども否定的なご意見が多い。
ゴメンナサイ、私のような者があれこれ邪推してケチを付けるべきではないのかもしれませんが、
でもそういう弱気なことが頭をよぎるほどに状況は芳しくない。これもまた事実だと思うのです。
そして何より高い・・・。うーん・・・。
「クラウド技術の実現で高価なゲーム機は、もはや不要です」・・・ってことを売りに出来るほどにはお安くないです。
これだったら中古のWii買ってバーチャルコンソールで遊んだほうが安上がりだしソフトもたくさん選べるよなぁ、って・・・
なんぼ間違っても「Wiiとして」使えるもの・・・
あるいは機器としての方向性が違うかもしれませんが、現行製品ではPSPや3DSが買えてしまうお値段ですよ。
どちらもネットワーク対応で桁違いに数多くのゲームがプレイ出来ます。メジャータイトルも多いです。
違いは「クラウド」か「ダウンロード」かだけ、です。
「制限だらけでソフトが無いクラウド」より、
「入手までの待ち時間が多少気になるけれど圧倒的多数のソフトが入手できるダウンロード」の方が優位ではないですか?
(もっと言うなら、近所のゲームショップに走ればいくらでも廉価なゲームソフトが買えます。が、そこは比較しないお約束でしょうね)
このビジネスモデルの収入源はコンテンツ課金ですよね?
そのために本体を格安配布するくらいの勢いでないと生き残れないのでは?
業界業態は違えども、CS放送局なんかはコンテンツを売るために衛星アンテナを工事費込み無料で配布したりしている。
携帯電話会社では基本契約+通信契約2年縛りという条件で、端末本体を実質無料にしている。
それが正しい形だとは思いません。でも、そうでもしなければ市場を確保できないことも事実なのでしょう。
コレってクラウドを使ったコンテンツ配信社会実験ですか?
そうじゃないですよね。「ゲーム業界」に「ゲーム機」として殴りこんだんですよね?
じゃあ、もっとキッチリしっかりサービス提供しようぜ・・・
今後この製品を取り巻く状況が変わったら売れるのかもしれませんね。
専用ゲーム機ではなく、既存のTV用メディアボックス・セットトップボックスで利用できるようになるとか。
(実際そのようなお話もあるようですし、海外では実現しているそうです)
あるいはこの製品をいしずえとしてより安価な後継機、他メーカー参入による互換機の発売・・・etc
ともかく、市場を確立することが急務だと感じます。
これまで数々の斬新なゲームシステムやサービスが鳴り物入りで(あるいは冷ややかに)登場しては消えて行きました。
そうなってほしくないのです。だけど「大丈夫、行けますよ!」という材料が・・・無い。残念ながら。
厳しいことばかり述べましたが、やはり成功して欲しいんですよ。
日本発の、巨大な既存マーケットへの挑戦として。
昨今の「ソーシャルゲーム(≒ガチャゲー)」より遥かに安全で健全で、夢があるプロダクトだと思います。